夜尿症 さっちゃん

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

さて、さて、今日の来談者は、、、

~夜尿症、さっちゃん~

「満天さん、、、」

『やぁ、さっちゃん。』

「施設の人にまた怒られちゃうよ、向こうに帰りたくない。」

『おや?』

「小っちゃい頃はね、こんなにおねしょはしなかったんだよ。でも最近はね、気をつけてるよ、寝る前にお水も飲まないよ、でもまたやっちゃった。

さっちゃんの施設ね、今は二人部屋なの。さっちゃんのように大きい子はあまりいなくて、同じ部屋のマリちゃんは年下、マリちゃんはもうおねしょなんてしないよ。今夜は、大丈夫と思っておむつはしなくて、おむつは気持ち悪い!失敗しちゃった。

高校生にもなって、おねしょはしないって施設の人は言うの。マリちゃんは、さっちゃんの事、分かってくれているけど、お布団やシーツを洗って片づけていると冬の間は寒いから、ドアの開け閉めがね、だからおむつして寝てって言うの。」

『おぉ。』

「小っちゃい頃はね、いつも失敗して、小学校になった時に、病院に行ってお薬もらって、だから大丈夫って、マリちゃんのように中学生になった時にはね、よくなったの。たまにお漏らししちゃう事もあったけど、病院の先生は大丈夫、そのうち治るよって、安心していいよって。」

『うん。』

「もうすぐ卒業。さっちゃんは大人になるんだ、働くの。だから、施設も出なくちゃいけないんだよ。グループホームって所に行くのよ。そこではね、自分の事は自分でするの。ご飯の支度やお掃除やいろいろとね、自分でやるの。そこにはお世話してくれる人もいるんだよ。今も学校がお休みの日に見学や体験に行ってるよ。

 お世話のおばさんも優しい人みたい。さっちゃんが一人で生活できるまでお世話してくれるって言ってたよ。

 今だって施設のお手伝い、たくさん出来てるけどね。小っちゃい子達の面倒もさっちゃんはよくやってる!と思うけど。お勉強も頑張ったよ。マリちゃんがお勉強みてくれるんだ。

 マリちゃんもさっちゃんも、とってもいい子なの、施設の人は分かってくれてるのかな、、、

 マリちゃんはすっごくお勉強ができるんだ、さっちゃんにも分かるようにお勉強教えてくれたよ。将来は先生になるんだよ。そしてね、いい子ども達をたくさん育てて、優しい親にするんだって、子どもを傷つけたり、捨てない親にするって言ってるよ。

 そしたらね、さっちゃんはもう捨てられないって言ってくれたよ。

 マリちゃんは年下だけど、お姉さんみたいなの。マリちゃんと離れるの、寂しいな、、、

さっちゃんね、パパもママもいないんだ、小っちゃい時はパパがいたけど、パパは男の人だからさっちゃんを育てられないんだって。パパはね、さっちゃんが大きくなったら一緒に住めるよって、はぁ~~

 さっちゃんみたいに、ずっと親と会えない子もいるって施設の人が話してくれた。でも、さっちゃんは、みんなより幸せな事もあるんだって、親がいてもマリちゃんのように辛い思いをする子がいるんだって、だから、だから、だから、、、

 でも、さっちゃんね、いつか会えると思っているよ。さっちゃんがいい子にしてるとね。小っちゃい時、施設の先生はパパが来てくれると“さっちゃん、いい子でした。”って、いつもパパに言ってくれたの、“パパはさっちゃんがいい子でいたら、また会いに来るよ”って言ってくれた、、、

 さっちゃんは、ここを卒業したら、どうなるかな。施設を出たらどうなるかな。」

『卒業!』

「そうだ!卒業!全部卒業する!

 さっちゃん、大人になるよ。

 満天さん、実はね、さっちゃんね、本当の事、、、知ってるんだ。」

『本当の事?』

「パパとママは、違う人と結婚して、子どもがいて、新しい家族と暮らしているの。さっちゃんには弟も妹もいるんだよ、パパにもママにもその子達にも、会うことはないけどね。

パパとママは一生、さっちゃんの事を忘れられないんだよ。この先、ずうっとね、さっちゃんにした事、さっちゃんを産んだ事や置き去りにした事を忘れたくても忘れられないんだ。おじいちゃんやおばあちゃんになればなるほどさっちゃんの事が心から離れられなくなるんだよ。だから、さっちゃんは、パパとママの心の中にずっといる事が出来るの。パパとママは、さっちゃんの事、忘れられないの。さっちゃんがママのおなかに入った日の事、産まれた日の事!

 パパとママのその気持ちはね、弟や妹も邪魔できない!さっちゃんだけに向けられる!特別なもの!」

『そう。』

「さっちゃんだけに向けられるパパとママの思い!さっちゃんだけのもの!」

『そう。』

「満天さん、私は大人、今から大人に生まれ変わるの!今日は満天さんに会えて、充分にお話し出来て、嬉しかった。さようなら、満天さん。」

~満天さんのつぶやき~

『さっちゃん、君の誕生が、君の存在そのものが、祝福されているんだよ。

 それを知るすべが、これからの人生に溢れているんだよ。


母 満の思い

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

今日も誰か、満天さんに会いに来ましたよ。

~母・満の思い~

「満天さん、いいかしら。」

『やあ、どうぞ。』

「明日はね、早起きして病院に行くのよ、息子と一緒に。息子はね、過敏性腸症候群って!私はね、もうどうでもいいの、病気もお好きに、どうぞって感じよ。はぁ~、ため息、、、

 後、何年、この生活が続くのかしら、中学生になったばかりなのに、学校も休みがち、24時間、毎日ゲーム、夜中もゲーム、最近は反発もひどい、暴力よ、物を壊したり、私に手を挙げるまねもしてくるのよ、恐ろしい、、、

 それなのに、そんな息子のために、一緒に病院に行くわけですよ、もう親やめたい。

 人に相談しても、結局、答えはない。私の話を聞くだけ、最初はね、話を聞いてもらうだけで良かったけど、最近はね、逆に疲れるの、、、

息子はね、発達障害でADHDって言われて、自閉もあるんですって、小さい頃は手もかかったけど、それなりに可愛かったのよ。公園ではね、広場をグ~ルグル走り回って、その笑顔が可愛くてね。お菓子のおまけのミニカーで満足そうにずーっと遊ぶ姿が愛おしくてね、、、

 うちはね、主人の暴力がひどいの、言葉も乱暴で、私を殴ったり、蹴ったり、暴力がね、物は破壊、結婚した頃は、力強くて頼もしいって、それも度を越せばDV夫。

 息子が産まれた時もね、何が気にいらないのか、病院に来たかと思えば、いきなりベッドを蹴飛ばしてね、先生やナースが来てくれて、、、今思えば、あの時に“助けて”って、、、あぁ、ずるずると、妹も生まれた。

 息子は似てくるのよ、主人に、」

『ふむ』

「娘はね、安心よ。でもね、考え始めるとこの生活で大丈夫なのかと不安、今は、元気に学校に行って、友達もいて、楽しそうに、何事もないかのように生活している、今の私の何よりの救い。」

『うん。』

「私が相談している人はね、“シェルターに入って”とか“早く離婚を”とか“仕事して”とかいろいろと言ってくる。

 最初はね、相談員のアドバイスもそれなりに私の耳に届いていた、親身になって話を聞いてくれていると感じていた。でも、今はそのアドバイスも入らないぐらい辛いのよ!むしろ指図されているようで、相談することが辛くなるし、もういいかな、、、しなくても。」

『ふむ。』

「だって、そうでしょ、そう出来るものなら、もうしてるわよ!逃げ出して、シェルターに入って、そんなこと分かっているわよ。出来ないから悩んでいるのよ、離婚だって、出来ていればしてるでしょ!簡単に言わないでよ、こっちの気持ちや状況がそう出来ない事をどうして分かってくれないのよ!って心の中で叫んでいるの。でも、それを口に出したら最後だから我慢して、もう、相談することも辛い、、、やめようかな、、、」

『ほお~、、、』

「今頃ね、夫はまだ夢の中、今日もずい分飲んで酔って大声で、、、暴れて、私や息子が病院にいる間もきっと布団の中でまだぬくぬくと寝てるのよね、気楽なものよ、どこかに消えて欲しい、あんな人、いなくなって、二度と私の前に現れないでほしい!」

『う~む。』

「後、何年続くのかしら、自分から終わりにするにはどうしたらいいのかしら、、、

 いつからかしら、この辛い生活にどっぷりとはまってしまったのは、、、」

『、、、』

「あぁぁ、子ども達、息子と娘、、、私は今日、目覚めたらいつも通りの生活が始まる。そして月日が、年月が流れていく。この先、夫と離婚しているのか、していないのか分からない。それでも時間は過ぎていく。子ども達は、いずれ大人になる。そうなった時、私は、、、どうなってるの!

 過去は取り戻せないし、このままいくしかない。でもこのままでは後悔する。変えなきゃ、この人生!私の人生を取り戻す!

 私は幸せになっていい人間なのよ!本当!今の生活って私の望んでいた生活ではないもの!私の人生を幸せの人生に変えていく、私はそうなっていいんだから!夫にも子ども達にも邪魔させない!

そう!だから今日から幸せだけに目を向けていくわ!」

『幸せ!』

「幸せ!満天さんに会えたこと!

 不思議ね、満天さんと話していると気持ちが落ち着く、楽になる、笑顔になれる!

 今日はお天気も良さそうだから、家に戻ったらお布団でも干そうかしら、シーツも洗って、、、あらっ?私ったら、何だか気持ちがワクワクしてきたわ!そうだ!家の花壇の手入れもしよう!あら、あら、忙しくなりそうね。

満天さん、ありがとう。何だか出来そうよ!この気持ちを忘れないように、現実社会で、やっていけそう!」

 

~満天さんのつぶやき~

『幸せも不幸も、自分の心がつくっているんだよ。

自分の心がそれを決めるってこと、気づいたようだね。

これから、この家族も笑顔が増えそうだ!」』