空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。
今夜、満天さんに会いたくて会いたくて
その気持ちを打ち明けに来てくれた方は。
~ 16歳 失恋 ~
「満天さん、」
『はい』
「私は高校生!誰よりも素敵な高校生!」
『はい』
「私の彼は同級生、中学からずっと一緒だよ。高校も一緒に受験して一緒に合格!
中2の時に告られて、ずっと付き合っているの。別れ話も何度か出たけど、その都度ちゃんと話してきた。いつも彼の浮気が原因。彼は優しいの、誰にでも。
私はそんな彼が大好き。でも、今回は違う!彼は本気みたい。」
『ふん』
「彼は、中学からテニス一途。高校に入ってからもテニス部で頑張っていた。
昨日、一緒に下校して何だか気まずい雰囲気で。彼は部活をサボりがちだったから顧問から注意されて、帰り道、ずっと、顧問の悪口や愚痴話。そろそろ分かれ道に着いた時、いつもなら、手をつないで、引っ張り合いっこして、じゃれ合って、帰る時間を遅らせていた。
今日は違う。
「もうおしまいにしよう。付き合うの疲れた。」「どうして?」「そういうの嫌なんだ、いつも、そういうの、重いんだよ。」「、、、、」「普通の友達、その方が気が楽だろ?」「嫌」「だから、さ、重いんだよ、それが、じゃあ。」
私は彼の背中をずっと見ていた、姿が見えなくなっても。
『ふぅ~』
「最近、彼はテニス部の女子とよく話をしていた。その女子は別の中学から来た子だった。今までの彼なら、私にどんな話をしたとか、どんな子でとかいろいろと話してくれた。 だから、浮気もすぐばれる。その度、彼を私に繋ぎとめなくちゃ!と私も頑張る。いつも最後は彼が「ごめんよ、ただの遊びさ。オレにはお前だけ、愛してるのはお前だけ」と。
いつもなら、彼は休み時間になると、男友達とふざけたり、私に会いに教室に来てくれた。ここ数日、彼は廊下や階段の踊り場でその女子と過ごす。私が話しかけると「後でな」と、男友達とふざける時も、その女子がいる。私はその風景を遠目で見ていた。そのうちあの女子への関心も薄まると激しい胸騒ぎを抑えながらね。」
『ふん』
「私は怒りと悲しみと言いようのない不安に襲われながら、ようやく家に戻った。「ただいま」そのままベッドに倒れ寝てしまって、親から「夕飯を早く食べて」と起こされて、食卓に着いた。そして普段通りにシャワーも浴びて考えた。「明日、ちゃんと話そう。このままではいけない、いつもの事、また彼から、“ごめんよ、愛しているのはお前だけ、俺にはお前が必要なんだ”と言ってくるに違いない。
あの女子より彼への怒りが強くなった。
彼からのライン。不安な気持ちで開けてみた。ラインには高校生時代を後悔したくない、だから一人になりたい、今はそっとしておいて、とだけあった。」
『ほう』
「一体、何、一人になりたいってどういうこと?私といると後悔するって事?悪いのはあなたじゃないの、いつも裏切り、だったら最初から付き合わなければ良かったじゃないの、告ってきたの、そっちだよ。こんなの辛いよ、重いよ、そばにいてよ、名前を呼んでよ、私はあなたの隣にしかいることが出来ないのよ、そうしたのは誰よ、あなたでしょ、私の時間を戻してよ、私の全てを返してよ、どうしてこんな残酷な事が出来るのよ、私の体は粉々に砕け散ってしまうじゃないの、私の心は海の泡となり消えてしまうじゃないの、もう私は山の霧となり隠れて見えなくなればいいのね、このまま消えてしまえばいいってことよね、あなたの中に私の温もりはもうないのね、私の影はみじんもないのね、この地球が無くなって、宇宙が失くなっても私の思いはあなたに溢れているのに、全てを返してよ、あなたなんか初めからいなかった存在にしてよ、私はこれからどうやって生きていくのよ、私に消えろというのね、それなら、私から初めからなかったことにしてやる。私が自分で終わりにするの、私の人生からあなたを消してしまう、あなたなんか!消えてなくなれ!!!」
『おぉぉ』
「涙は出てこない、怒りだけが込み上げてきた。恐ろしい考えが次から次へと浮かんだ。
ふと、疲れて机の上の鏡に目が留まった。そこに映っていたのは私ではない。そこには巨大な蜘蛛が恐ろしい姿で映っていた。ぞっとして、後ろを振り返った。
“はっ”と我に返った、その鏡は彼がプレゼントしてくれたもの、ピンクのハートが散りばめられている、ディズニーでデートした時に買ってくれた。私が世界一、かわいい、世界一の抜群のスタイルと言ってくれた。今は、世界で一番醜い私。
怖い、、、何かにとりつかれている、私?」
『、、、』
「とにかく蜘蛛を追い出さなくては、、、」
『うん』
「彼とあの女子を追い出さなくては!」
『ああ』
「鏡を捨てた。全て一緒に。」
『だね。』
~満天さんのつぶやき~
『失恋、悲しいね。
それでも、経験してね。
恋愛も失恋もすべて必要な経験、
素敵なレディになるための、ね」