コール詐欺

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

さてと、今日のお客様はどなた?

~ コ~ル詐欺 ~

「ちょっと、ちょっと、ちょっと!」

『むむ』

「あら、ごめんなさい。私ったら挨拶もせずに。こんにちは。初めまして、よろしくお願いいたします。」

『ふむ、(本当は初めてじゃないけどさ)』

「聞いてくださる?我が息子の話を。」

ふむ

「息子は平凡な中学生、我が家も平凡。

ところが大事件!コール詐欺、息子が、どうしましょう!

 久しぶりに地域でお祭りを開催、町会総出で盛り上がったわ。私も主人も参加して。

 その日、主人は町会のパトロールメンバーで町を巡回していたし、私は夕方にでも会場に行こうかしらと家事を済ませていたのよ。

 息子は午前中部活で、午後から友達とお祭りに出かけたの。お祭りのお小遣いは、奮発して2千円。お昼は友達と一緒に屋台の焼きそば?お好み焼き?たこ焼き?なんて楽しそうにね、ふふふ。」

『ふん』

「私は家事も一段落、夕食の下準備まで済ませて、少し休憩して炊飯器をセットして出かけようと思っていたところに、息子から電話!

“ お母さん、大変、お小遣いが足りなくなっちゃう。焼きそば、たこ焼き、ラムネ買って、みんなはポップコーンとか買うんだって、僕、お金が少し足りない。みんな、屋台の射的もするって言っているよ。どうしよう。”

“ まあ、みんな、お小遣いいくら持っているのかしら? “

“ わかんないよ!直ぐに持ってきて!3千円!“

えっ、そんなに?とにかくすぐに行かなくちゃ!

すぐに自転車に乗って、向かう途中で炊飯器セット忘れた事に気づいた。あ~、もう、悲しくなって、とにかく会場の入り口でお金を渡して、すぐに家に引き返した。そして、炊飯器セットした途端、また電話が鳴ったの。

“ お母さん、どうしたらいいの、お金が足りないよ。射的でどうしても欲しいものがあるのに、取れないよ。あと5千円だけお願い!”

“ えっ!5千円!どういうことなの?もう射的はやめたらどう?お小遣い自分でちゃんと考えて使わないとダメじゃない。”

“ 今日だけ特別!みんなと遊べないじゃないか!”

『ほお~、、、』

「えっ、遊べない?どういうこと?

普段は、お小遣いも持たせていないし、特に何か欲しがる子でもないし、今日は特別と思って、また会場に向かったの。今度は自転車置き場に自転車を止めて、入り口に向かおうとした時に、自転車置き場の担当のおじさんに声を掛けられた。

“ さっきも来てたね、何度もご苦労さん ”

“ 息子にお小遣いを届けにね、足りなくなって電話があって ”

“ 息子さん、いくつ?”

“ 中学1年生、やっぱりお小遣い必要よね、はぁ~、私の一日のパート代より高くなっちゃった ”

“ お母さん!それ、渡しすぎ!中学生、2千円で充分!今、はやりの振り込み詐欺!騙されやすいタイプでしょ!気を付けて!”

あ”あ”あ”――――

やられたわ、息子からのコール詐欺!」

『うむ。』

「後で、息子の友達の親に聞いたら、その親は自分の息子がいくら持って行ったか知らなかったらしく、びっくりしていた。問い正したら、こっそりお年玉をカードで引き出していたんですって。私は更にびっくり、カードを、子どもが!

 お祭りも終わり、今日の出来事をお父さんに報告!

 息子はお父さんから叱られて、家族でお金の話をしたの。お小遣いが必要な時は?その渡し方は?金額は?結局、話し合いの結果、毎日、100円。小学生みたいだけど。私達も渡したお小遣いについてはうるさい事を言わない約束もしてね、本当は言いたいけどね、辛抱辛抱。そしてお父さんから貯金箱のプレゼント。自由に開けられるところが良いところ。透明の貯金箱、中が良く見える。使わない時は、この中に入れておくといいよって、息子は喜んで、“ 僕、おつりもここに入れるよ ”って、ふふふ。

 お年玉も話し合った。お年玉は息子から貯金したいからと言ってきたから、今まで通りね。

 お父さんが、息子にちょっときつい一言。

君はいずれ大人になって自立するんだよ。そこからが人生の本番スタート。その時、もう一度、君が貯金したお金について自分で考える時がくる。だから通帳のお金はその時まで大事にしようね。

それとね、お母さんは素直で騙されやすいから、君が緊急事態でも電話はダメだよ。緊急事態は近くの交番に行けばいい。きちんと顔を合わせて話をしようね、お金の使い道。

お父さん、私にもきつい一言。

お母さん、これからは例え息子でも電話の要求は聞いてはダメ。息子や僕は電話しませんからね。すぐに警察に通報しなさい。息子も私も納得、納得。

はい、分かりました。

これで我が家のコール詐欺は解決。安心、安心。」

『ほっほう』

~満天さんのつぶやき~

『大昔はね、貝や石、物品などがお金の代わりに活躍していたんだよ。

ああ、そういえば、このお母さん、あの頃、同じことを親から教えてもらっていたねぇ。

ほっ、ほう!」』



お誕生日のおつり

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

今日の来談者は、おやおや、、、

~ お誕生日のおつり ~

『やあ。』

「こんにちは!決まったのよ!」

『ん?』

「お金の使い方。」

『ほう。』

「昨日は娘の誕生日、お財布の中身はちょうど1万円札1枚。ホールケーキを買えるほどの余裕はないけどショートケーキなら親子で3つ買えるわ。駅前のケーキ屋さんがいいわ。お夕飯は手巻き寿司。冷蔵庫のレタスにきゅうり、卵を焼いて、納豆もツナもあったわ。夕方の見切り品でお刺身を買って。ちょっと贅沢かな?

お誕生日だからちょっと奮発。残り数日で家計のやりくり工夫して。

さあ、お買い物。夕飯のお買い物を終えて、ケーキ屋さんで “ショートケーキ3つ下さいな、イチゴで飾られているショートケーキ” 消費税込みで1,290円、なかなか良いお買い物。おつりもらって、自宅まで歩いて帰りましょう。節約、節約。」

『ほお~』

「まずはお洗濯物片づけて、さあ夕飯の準備、娘もお手伝い?っぽいね。えらいわ~。あらあら、パパが帰ってくる時間ね。お風呂の準備もOK!

“ おかえりなさい “

“ ただいま帰りましたよ~、お誕生日おめでとう。ふふふ、ちょっとお小遣い奮発!はい、お誕生日のプレゼント、アクセサリージュエリーキッズ 888円。この数字すごいだろう、末広がりさ、娘の将来が楽しみだな~、きっと末広がりに幸せが広がるね “

 ふふふ、単純さがパパの良いところ。たまに子どもすぎて面倒って思う時もあるけど。 

“ さあ、手巻き寿司パーティー、お誕生日おめでとう “ 」

『ふん。』

「家族3人のお誕生日会も終わり、さて、家計簿ね。

 ん?合わない!夕飯のお買い物、1万円札出してと、ケーキ屋さんで5千円出して、おつりは3,710円、ん、8,710円。あら、嫌だ、あのケーキ屋さん、おつりを間違えているわ。レジの集計合わなくて困っているんじゃないかしら。

 私の変顔を見つけてパパがきた。おつりの話をすると。

” えっ!ラッキー!えっ!もらえないの?返すの?店に?本当はママのへそくりにするんじゃないの?それってずるくないか!パパはね、お誕生日プレゼント、パパの少ない小遣いで買ってさ。ママはケーキ屋さんでおまけのメッセージカードだろ、あ~あ、パパだってコンビニのコーヒーや自販機で冷たいコーラ我慢してさ、パパだって頑張っている!えっ?分かっているって?だったらさ!ダメ?店員さん困ってるから?

 もういい!ママは本当に融通が利かないな!本当に返すのか!いや、一緒に返しに行こう!何なんだよ!返すところ見るから!パパに内緒でその5千円掠め取るつもりだろう。

 えっ?駅で待ち合わせ?よし!そうしよう “

パパ、いい加減にして~!まるで子ども!面倒臭い!もう!」

『ほっほう!』

「今日パパは機嫌悪く出勤。私はパパの時間に合わせて家事をテキパキ。帰りは3人で駅から歩きましょう。パパの機嫌も直ってくれればいいけどね。娘は早めの夕食とお風呂を済ませてと。ああ~忙しい!

 夕方、ケーキ屋さんに行くとそこにいたのは店長さん。おつりの話をすると確かにレジのお金が合わなかったとおっしゃった。

 ところが、店長さんは、

“ わざわざ返しに来てくれてありがとう。でもね、その5千円、うちの店員に確認したいけど今日はお休み。それにその店員、どのタイミングで間違えたか気づいているかな。一日、たくさんのお客様がいらっしゃるし。他にもおつりを間違って渡している人もいるかも知れないし、たまたま合わないレジの金額は同額だけど、その時に気づいてくれないとね。あなた方の言うことが正しいかとも思うけど、お店側としたら確認の取りようがないから受け取れないの。せっかく来てくれたのにごめんなさい “

“ えっ、えっ、えっ~ “ 」

『ほっ、ほう!』

「結局、5千円は返せずに。

 自宅までの道のり、パパは無言。

 さあ、自宅に戻りパパの食事もお風呂も済ませ、あら、娘はまだ寝ないのね。困ったわ。

 パパと娘と私と川の字、お布団でごろごろ。

 すると娘から “ ゴセンエン、どうするの? “

“ どうしたらいいか、みんなで考えよう “ とパパ。

“ 私ね、いいアイデアがある!もう1回、お誕生日会するの。手巻き寿司とイチゴのお祭り盛盛ショートケーキで!ママの手巻き寿司、最高!世界中の人とみんなでお誕生日会!みんなで楽しくって、美味しいお誕生日会 “

 パパも私も大賛成!それなら世界中の人にこのお金で祝ってもらおう!みんながお誕生日!そして寄付をすることにしたの。パパが決めたの、そうゆうことしてみたかったんだって!

 パパは本当に単純、” 888円の末広がり、お誕生日プレゼント、娘の将来は絶対幸せになる!世界中で大事にされるほど幸せになる“ って得意げに話してた、ふふふ。」

~満天さんのつぶやき~

「お誕生日!おめでとう!

皆、祝福を受けてここにいるんだよ。

見てごらん!

お金が喜んで微笑んでいる!」


学校役員の掟

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

さて、さて、今夜のお客様は、、、。

~ 学校役員の掟 ~

「満天さん」

『やあ。』

「私ね、素敵なお友達が出来たのよ。」

『おぉ!』

「その素敵なお友達ってね、、、」

『ほう。』

「末娘はやっと6年生。悩んだけど、これからは方針を変えて支援学級に通うことにしたの、今年は小学生最後の年、私も気持ちを切り替えないとね。

これで最後、学校役員も引き受けて、パートも辞めたの。」

『へ~。』

「今は専業主婦ってとこ。仕事辞めて、“ちょっと楽?” な~んてね、思ったりして、それが、これって案外大変なのよ。今まではパートにかこつけ、言い訳が出来たでしょ、それがね~。

 いろいろな連絡が来るのよ、ラインに!それも急ぎでもないのに、直ぐ返事が欲しい人がいるのよね。役員の皆さんはお仕事していらしてね、日中に連絡が取れない方も多くて、仕事中は職場に携帯持ち込めないから、休み時間を利用してみたい、だからお昼は必ず私もラインチェ~ック!役員を仕切っている人がいて、そのボスママは一日中ラインしてくるのよ。 “あなた~!仕事していますか~?” って言いたい。私がすぐ返事しないと “仕事してないでしょ、ライン見てよ” って、私、専業主婦だけどそんなに暇じゃないのよね!

 うちは主人が自宅で仕事している日が多いの。だから子ども達がうるさいと近くに住む主人の実家に帰って仕事をするのよ。義父は定年退職で今は夫婦で静かに生活をしているのよ、地元の人だから、隣近所の事は何でも筒抜け、私達家族の事もね、、、まあまあ。

私が仕事を辞めて専業主婦をしていることを誰が言うともなく皆さん知っているのよ、当然、末の娘の事もね。

娘が不登校になった時も、近所中、もちろん主人の両親も心配して毎日のように家に来ては、あれこれと、、、そんな地域だから、ボスママやママ友達にも隠し事出来ないしね。私は、私の事をそっとしておいて欲しいの。静かに穏やかに子育てや主婦をしたい。娘が不登校でも、私はそれでも見守っていくことは出来ていたのよ。学校の先生とも、無理強いしないでゆっくりいきましょう、と方向性もしっかり持っていた。でも周囲がね、、、うるさいのよね、ったく!

 娘はね、控えめでおとなしい性格なの、静かな子なのよ。自分の世界にいる時がとても幸せなの。それだって学校の勉強もしてるわよ。不登校の時も家でお友達が届けてくれた宿題を真面目にやっていたわ。」

『ほお~、、、』

「今はね、教室も落ち着いていて、登校もして、一人に静かになりたい時は教室の隅の小部屋で本を読んだり、ゴロゴロして落ち着いている。

 やっとね、上の子ども達が手も掛からなくなったし、これから末の娘を中心に家庭でも落ち着いて静かに生活できると思っていた。これから1~2年は子育て中心に、今まで手抜きだった家事なんかもちゃんとして、主人にもちょっと見直してもらって、いい奥さん出来るかな~、なんてね。」

『ふん。』

「まさか、まさか、学校役員を侮っていたわ。こんなにも家族よりも束縛されるなんて、それも上下関係も強烈、ボスママって何?まあ、役員の長だけど、この時間の束縛、何?それも、食事の支度や、洗濯する時間まで聞いてくる? “買い物ぐらい早い時間にしたら、ライン見てよ。” “もう夕食、終わったでしょ。チェック出来るよね。” “ご主人、在宅なら家事手伝ってもらえないの。”

あぁぁぁ~、うるさいったら!

 役員の集まりに行くでしょ、噂話!あそこのお子さん、あそこの旦那さん、あの子のお母さん、あの子のお父さんって!

役員会議の実際の話なんてね、ほぼそれまでに出来上がっているんだから、ラインで!忘れたらダメ、掟なの。」

『おぉ~!』

「学校役員ってね、それなりにやりたい人もいれば、仕方なくやっている人もいるのよ。率先してやる人はね、周りをグイグイ巻き込んで引っ張ってくれる。ある意味、頼もしい、そういう人がいないとね、分かってるわよ!あぁ、でも、ある意味、面倒くさい。

みんな大人だから、それなりに周りと調和も取りつつ、まあまあ、みんな、頑張っているのよ、それなりに。

最近、私は私との会話ばかり。

 私って偉い!よくやっている!って私を褒めてあげる。そんな時、私を分かってくれている人って私しかいないの? と寂しくもなる。それでもこれを繰り返すしかないの。

 毎朝、毎晩、繰り返すの。

 私!偉いよ!その姿がキラキラしている!今日もたくさんよくやった!私のお陰!

私の言葉が!行動が!態度が!みんなを幸せにしてるんだ~!

ちょっと、傲慢?なんて私に問いかけたら、私の耳元で、私の声で、今がベスト!今のままが一番!って、もう一人の私が応えてくれるの。」

『うん、うん。』

「私の大親友!それは私自身!そんな大切な私に感謝!」

~満天さんのつぶやき~

今、目の前にいる人は誰? 

鏡をのぞいてごらん

ここから幸せがはじまるよ。


湯豆腐

満天さんの談話室

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

今日の来談者は誰かしら。

~湯豆腐~

「ごきげんよう。」

『やあ!ごきげんよう。』

「満天さんに幸せのお裾分け!娘もようやくこの春に社会人、同居の義母の介護も始まったばかり、とても新鮮さも感じる、不思議でしょ、介護なんて言うと周りはね~、でも幸せ!」

『おぉ。』

「ふ、ふ、ふ、

 結婚して、25年。私は専業主婦だから、家事や育児の毎日だったわ、まあまあね、いろいろな事もあったけど、私は夫に頼りきりの生き方しか出来なかった。まあ、そういう人生なんだと思っていたから、何とか受け入れて、、、受け入れざる得ないしね。

 娘はね、小さいころから大変で、人見知りが激しくてね、人一倍。精神年齢も未だに幼い!社会人にもなるのにゲームセンターで、ほらほら、あれよ、ぬいぐるみ!ゲットして喜んでいるのよ、ったくね!

 そんな子だから、学校では周囲と上手に付き合えなくてね、不登校になったりもしたのよ、地元の高校にギリギリで入れて、次は朝、起きられなくなってね、医師からは起立性調節障害って言われて、私の方が受け止めてられなくて、実際 “さぼりでしょ” ってね、思っちゃた。

 高校は毎朝、遅刻寸前、車で送って。休日の朝食は、テーブルで半分眠りながら、こっくり、こっくりと、寝てる?食べてる?かって。その子がね、社会人!この先どうなることやら。

 主人も忙しいからって、子育てに協力も何もなく、学校行事に参加したこともないのよ。

それでもね、娘には甘い!顔を合わす時間も少ないから、怒ることも叱ることもなく。家事も子育ても介護も、まるで関係ないって感じでね、要するにいいとこ取りよ。

 そんな中で、義母との同居も始まり、静かな人でね、当初、どう接していいのか分からなくて、“お義母様!遠慮しないで”って思ったぐらい、良くも悪くも何でもね。」

『ほう!』

「実は昨夜ね、こんな事があったの。主人は湯豆腐が好きでうちはよく湯豆腐をするの。」

『ほ~!』

「義母も湯豆腐は好んで食べてくれるのよ。昨日の夕飯も湯豆腐!主人は遅いと思っていたから、娘と義母と先に夕飯を済ませて、そしたら主人が帰宅して、てっきり外で夕飯を済ませると思っていたから、“食事!”って、湯豆腐を出したら、“またか、腹減ってるのに、おかずにならん!”って言うの。まあね、おかずにはならないのかも、でもね、私たちは、湯豆腐はおかずだけどね、まあまあ、そんな事で主人には、お魚焼いたり、前日の残り物なんかでおかずを出して。

 そうしたら、義母がね、急にまたテーブルに着いて、自分でご飯をよそって、主人の湯豆腐を取ってね、上手にご飯の上においてね、ポン酢をかけて食べ始めたの。 “美味しい、美味しい” って言いながら、、、

 主人はね、バツの悪そうな顔して、まあ最後まで何事もなく夕食済ませてくれたわ、義母もね、何事もなかったようにしていたけど。

 私は何も聞かないし、言わないって決めているの、どうして義母が夕飯をまた食べ始めたのか、主人に対して何か言いたかったのか、私に対してなのか、もしかしたら認知なのか、分からない。 ”見ざる聞かざる言わざる“ 私も何も考えないことにしたの。

 私は、今の生活をそのまま、ありのまま受け止めていこうと思っている。」

『うん。』

「私の知り合いの多くは働いている。私のように専業主婦は少数派。主人も娘もそれでいいと思っているのかな、家計も大変な時もあったけど何とか乗り越えてきたし。

 裕福な家庭とは言い切れないけど、まあまあ普通に、買い物だって、スーパーで食べたい物ぐらい買える、ローンも大変だったけど何とか払えた、主人が頑張ってくれた。

 そうね、共働きだったら、友達と食事や映画、旅行もして、高級化粧品やブランドの洋服やバッグも持っていたかも、ね。

 以前はね、働いているママ友がイキイキして見えて、子育ても仕事も全てが羨ましかった。私はね、主人頼りの人生だったけど、今は、それで幸せだなぁって感じる。娘や主人を送り出した後、ベランダで洗濯物を干したり、お布団を干してパンパンとはたきながら太陽の日を浴びる幸せ、、、娘を幼稚園に迎えに行き、夕飯のメニューを考える幸せ、娘を高校に送る時の私の存在感、義母の下着を洗ったり、家事をする私、それだけでいい、何もない、普段通りの生活、この先も主人と二人きりの生活になっても、歳を老いても、このまま生活を送るでしょう。

私にとっては、この生活が何もない生活が、かけがえのない幸福な生き方、でしょ!

私は満天さんに今日、これを伝えたくて来たのよ!

ありがとう、満天さん、あなたもお幸せに!」

~満天さんのつぶやき~

『幸せって、自分の心が決めること、

何も気にしない!

人に気を取られず、今の自分と向き合って、

“当たり前の幸せ“ に気づくとね、もっともっと幸せが増えていくよ。』


母 満の思い

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

今日も誰か、満天さんに会いに来ましたよ。

~母・満の思い~

「満天さん、いいかしら。」

『やあ、どうぞ。』

「明日はね、早起きして病院に行くのよ、息子と一緒に。息子はね、過敏性腸症候群って!私はね、もうどうでもいいの、病気もお好きに、どうぞって感じよ。はぁ~、ため息、、、

 後、何年、この生活が続くのかしら、中学生になったばかりなのに、学校も休みがち、24時間、毎日ゲーム、夜中もゲーム、最近は反発もひどい、暴力よ、物を壊したり、私に手を挙げるまねもしてくるのよ、恐ろしい、、、

 それなのに、そんな息子のために、一緒に病院に行くわけですよ、もう親やめたい。

 人に相談しても、結局、答えはない。私の話を聞くだけ、最初はね、話を聞いてもらうだけで良かったけど、最近はね、逆に疲れるの、、、

息子はね、発達障害でADHDって言われて、自閉もあるんですって、小さい頃は手もかかったけど、それなりに可愛かったのよ。公園ではね、広場をグ~ルグル走り回って、その笑顔が可愛くてね。お菓子のおまけのミニカーで満足そうにずーっと遊ぶ姿が愛おしくてね、、、

 うちはね、主人の暴力がひどいの、言葉も乱暴で、私を殴ったり、蹴ったり、暴力がね、物は破壊、結婚した頃は、力強くて頼もしいって、それも度を越せばDV夫。

 息子が産まれた時もね、何が気にいらないのか、病院に来たかと思えば、いきなりベッドを蹴飛ばしてね、先生やナースが来てくれて、、、今思えば、あの時に“助けて”って、、、あぁ、ずるずると、妹も生まれた。

 息子は似てくるのよ、主人に、」

『ふむ』

「娘はね、安心よ。でもね、考え始めるとこの生活で大丈夫なのかと不安、今は、元気に学校に行って、友達もいて、楽しそうに、何事もないかのように生活している、今の私の何よりの救い。」

『うん。』

「私が相談している人はね、“シェルターに入って”とか“早く離婚を”とか“仕事して”とかいろいろと言ってくる。

 最初はね、相談員のアドバイスもそれなりに私の耳に届いていた、親身になって話を聞いてくれていると感じていた。でも、今はそのアドバイスも入らないぐらい辛いのよ!むしろ指図されているようで、相談することが辛くなるし、もういいかな、、、しなくても。」

『ふむ。』

「だって、そうでしょ、そう出来るものなら、もうしてるわよ!逃げ出して、シェルターに入って、そんなこと分かっているわよ。出来ないから悩んでいるのよ、離婚だって、出来ていればしてるでしょ!簡単に言わないでよ、こっちの気持ちや状況がそう出来ない事をどうして分かってくれないのよ!って心の中で叫んでいるの。でも、それを口に出したら最後だから我慢して、もう、相談することも辛い、、、やめようかな、、、」

『ほお~、、、』

「今頃ね、夫はまだ夢の中、今日もずい分飲んで酔って大声で、、、暴れて、私や息子が病院にいる間もきっと布団の中でまだぬくぬくと寝てるのよね、気楽なものよ、どこかに消えて欲しい、あんな人、いなくなって、二度と私の前に現れないでほしい!」

『う~む。』

「後、何年続くのかしら、自分から終わりにするにはどうしたらいいのかしら、、、

 いつからかしら、この辛い生活にどっぷりとはまってしまったのは、、、」

『、、、』

「あぁぁ、子ども達、息子と娘、、、私は今日、目覚めたらいつも通りの生活が始まる。そして月日が、年月が流れていく。この先、夫と離婚しているのか、していないのか分からない。それでも時間は過ぎていく。子ども達は、いずれ大人になる。そうなった時、私は、、、どうなってるの!

 過去は取り戻せないし、このままいくしかない。でもこのままでは後悔する。変えなきゃ、この人生!私の人生を取り戻す!

 私は幸せになっていい人間なのよ!本当!今の生活って私の望んでいた生活ではないもの!私の人生を幸せの人生に変えていく、私はそうなっていいんだから!夫にも子ども達にも邪魔させない!

そう!だから今日から幸せだけに目を向けていくわ!」

『幸せ!』

「幸せ!満天さんに会えたこと!

 不思議ね、満天さんと話していると気持ちが落ち着く、楽になる、笑顔になれる!

 今日はお天気も良さそうだから、家に戻ったらお布団でも干そうかしら、シーツも洗って、、、あらっ?私ったら、何だか気持ちがワクワクしてきたわ!そうだ!家の花壇の手入れもしよう!あら、あら、忙しくなりそうね。

満天さん、ありがとう。何だか出来そうよ!この気持ちを忘れないように、現実社会で、やっていけそう!」

 

~満天さんのつぶやき~

『幸せも不幸も、自分の心がつくっているんだよ。

自分の心がそれを決めるってこと、気づいたようだね。

これから、この家族も笑顔が増えそうだ!」』