ママ、仕事にいかないで

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

おや、おや、ちびっ子が来た。

~ ママ!仕事にいかないで! ~

『おや』

「神様が願いを叶えてくれたの!」

『ほう』

「あのね、初めてのお留守番、ママはお仕事に行くから、夜は一人でお留守番。

 でもね、怖くて寂しくてたまらなくて家を飛び出しちゃったの。」

『うぬ』

 

「あの日、おばあちゃんのお家にパパが迎えに来て、ママはパパと一緒に住む事になったから、あーちゃんとお引越し!おばあちゃんのお家からお引越し!

 新しいお家で、パパとママと3人の生活。パパと会ったのはお引越しの日だけ。お引越しの日、パパはおばあちゃんに何かお話していた。おばあちゃんは泣いていて、ママの顔は真っ黒になった。

 お引越しすると、ママは直ぐにお仕事を始めたの。ママは生活のためって言うの。あーちゃんにお洋服、お靴を買って、美味しいお料理も、あーちゃんが大人になって幸せになるためにお勉強できるようにお金が必要だって。だからママは頑張って働くの、あーちゃんのために。

朝から夜まで保育園。絵本を読んで、お絵かきして、お歌もね。おもちゃもたくさん。夜になるとお部屋の中に小さなお布団をたくさん敷いてみんなで寝るの。お部屋は真っ暗になって、怖くて泣いてばかりいたけど、そのうち疲れて寝ちゃうんだ。お布団の隅をもみもみしていると、ママの胸に抱っこされているみたいで落ち着いてくるの。

 朝から夜までママはお仕事。朝のお出かけの準備時間があーちゃんとママのお話の時間、抱っこしてもらえる大事な時間なの。」

『ふう』

 

「あぁ!おばあちゃんのお家はね!レンゲやツメクサで花冠や首飾り、あーちゃんはお姫様。ぺんぺん草やカラスノエンドウ、ノゲシやたくさんの野花でお皿を飾るの。草笛の合図で、さあ、パーティー!

夏は、お野菜取りを手伝うの。近くの小川は一人で行ってはダメ、おばあちゃんと一緒!メダカやドジョウ、小さなお魚さん達と小川の中をお散歩したよ。夜になると楽しい蛍のダンス!

トンボが来る頃には、山栗拾いやアケビの実をとりに行くの。美味しい手料理、ご馳走!夜にはマツムシ、スズムシ、コオロギ達、みんなが競って演奏会!

冬になるとね、囲炉裏がとっても暖かい。あーちゃんは囲炉裏が大好き。お餅やお魚だって焼けちゃうよ!」

『ほう!』

「あぁ!新しいお家ではね、ママとお散歩たくさんしたよ。お買い物や公園も行ったよ。お仕事に行くときは駅までたくさん歩くの。ママと手をつないで、抱っこされて、ママはね、急いでいる時はあーちゃんを抱っこしてくれるの。その時は、嬉しくて、でも悲しくて寂しくて、気持ちはぐちゃぐちゃ!

 こっそり、神様にお願いするの。おばあちゃんのお家に帰れますように、ママがお家にいられますようにって。」

『あぁ!』

「あの日、夕方になって “ ママはお仕事があるけど、今日はあーちゃん、一人でお家でお留守番、誰か来てもお部屋から出たらダメだよ。寂しくないように、TVも電気もつけて、お菓子もジュースもあるからね。今日はママと一緒に行けないの。終わったらすぐに帰ってくるからね、いい子に待っていてね ”

あーちゃんは何が何だか分からず一人になった。だんだんお外は暗くなって、TVは何かやっていた、ジュースもお菓子もあった。

怖くなって寂しくて、玄関で座ってママを待っていたけど、長い時間待っていたけど、ママは帰ってこない、まだ仕事終わらないのかな、ママ、どうしたのかな、ママ!ママ!ママ!

 外に出たの、泣きながら。

 お外は真っ暗、ずっと泣いていた。」

『!』

「お巡りさんがおばあちゃんを呼んでくれたの。おばあちゃんが迎えに来てくれたよ!」

『ああ!』

「ママはね、もう働かなくていいのよ。どうしてか知ってる?

あーちゃんは知ってるよ。満天さんにだけ教えてあげる。」

『何だい?』

「ふふふ、パパと別れたから。ママはね、パパが一度もお家に帰って来なくても一人で頑張っていたの、パパのために、あーちゃんのために。でもね、もうパパのために頑張らなくていいのよ、あーちゃんのために頑張らなくてもいいの。

 お巡りさんがママに話していたの、“ これであなたは解放されましたよ。おばあちゃんと、あーちゃんと元の生活に戻れように早く手続きを済ませて下さい。何かあればすぐに警察に相談してください ”って。

 ママはあーちゃんに何度も謝っていたよ。“ごめんね、ごめんね”って。

 ママに言ってあげたの。“ あーちゃんはね、お洋服もお靴もいらないよ。美味しいごちそうはおばあちゃんの田畑に川に山にあるよ。お勉強はあーちゃん自分で頑張ること出来るもん。立派な大人になるよ、だから何もいらないよ、あーちゃんが一番欲しいのはママ! ”」

~満天さんのつぶやき~

『 いつも抱きしめてあげて

その腕に

いつも微笑んであげて

その瞳に

ぬくもりを 微笑みを

愛を伝えてあげて

あーちゃん、ママ、もう頑張らなくていいんだよ。』


見栄っ張り

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

お~や、あれに見えるは、、、

~ 見栄っ張り ~

「満天さん、ごめん。」

『ああ』

 

「あの頃は生活が乱れ、言い訳だな、健康管理を怠っていた。なんとなく疲れる、胸がざわざわ、頭はズキズキ、もやもや、夜中に幾度となく目が覚める。そろそろ歳だ、一度ぐらい健康診断を受けてみるか、予約するのも面倒だ、それがやばかった。

そもそも病院ってところは何とも居心地が悪い。待合室は地元の老人達の集会場と化し、近所の噂話が充満している。長い時間待たされて、それこそ健康な人間が”待合室病”になっちまう。

自分が受診!ああ、とんでもない。病院なんて億劫だ。この不精な性格、浅はかな考え、しかし、とうとう受診、“ 血圧高いですね、薬出しておきますよ ” まあ、そんなところかと思い、薬も飲んだり飲まなかったりと、それだけで何となくやり過ごしていた。」

『うむ』

 

「大学時代はバイトやレスリングに明け暮れ充実した生活、楽しすぎて単位を一つ落として1年留年。親父にどうするかと聞かれ、自分でバイトするから一年だけ行かせてくれと言ったら、結局、学費を出してくれた。バイト先で知りえた伝手もあり就活も苦労することなく卒業後はある企業に就職、自立し順風満帆!

 40も迎えようとする頃、特に何かあった訳でもなく、深い意味もなく、あっさりと退職。強いて言えば、 ”そろそろ人生を変えてみよう” などと能天気な浅はかな考え。不思議に両親からも何か問い正されることもなかった。親父から「もったいないな」と言われただけで。

 実家に戻って地元の会社で10年ほど働いた。生まれ育った地元に馴染めず、実家が妙に居心地悪く感じていた。親父が「家に息子が戻ってきた」と近所に話していた。どんな気持ちで話していたかは分からない。何かバツの悪い気持ちが後を絶たず会社に出勤するのも近所の目を盗むようにコソコソと出勤したものだった。」

『ふん』

 

「親父は厳格なサラリーマン、お袋は昔ながらの女で、親父や自分達の世話に明け暮れていた。

 親父は見栄っ張りで外見を気にする人だった。世間体をとても気にしていた。近所に役所の世話を受けている人物がいたが、親父はいつも「毎日プラプラと朝から出かけてパチンコか酒を食らってはふざけた奴だ。」とぼろくそに悪口を言っていた。そんな親父を見ていると自分は転職したことを遠回しに責められている気がしていた。

 地元に戻ってきた時、本当はしばらく仕事もしないでプラプラしたかったが考え直し、すぐに仕事に就いた。自分も親父の子、世間体を気にして見栄っ張りな性格もあるからな。地元の会社に就職が決まった時は、何だか残念に思いつつも、まあ体裁も取れたかとホッとした。」

『ほっほっ!』

「そんな親父も定年退職後の深酒が祟り、入退院を繰り返した。お袋も同じ頃から体調を崩し、あっという間に部屋を四つん這いで這うようになり、会話もチンプンカンプン。お袋と会話が出来ない、その時はお袋に随分と歯がゆい思いをさせたかと思って心苦しくなった。食事や水を飲むことさえも難しくなり介護も大変になった。頑固な親父と出来の悪い息子に対する初めての抵抗かとも思えた。あんなに体裁を気にしていた親父は、最後まで酒を手放せず、お袋が亡くなると恥ずかしい話だが、さらに酷くなった。酒を片手にスーパーに酒を買いに行くやら、小便を漏らしていることも気づかず外を徘徊したり。なんてみっともないんだと怒鳴りつけたい気持ちにもなったが、自分も親父の血を引いているものだ。見栄っ張りで体裁を気にして、親父を責めることもなく、怒鳴ることもなく、良き息子を演じた。」

『ほう!』

「そんな中、異変が起きた。介護疲れか。やばいな、ぐったりだ。仕事も休みがちとなった。しかし、理解のある会社もあるもんだ。介護休暇も使い、社長はなんていい人なんだ!と思うほど良くしてくれた。職場の皆からも“病院行きなよ” と言われた。

 よし!今回はもう少し大きいな病院で検査しよう!地元の脳神経外科を受診した。進歩だ、この不精な自分が!病院なんて!本当に億劫な自分が!

先生の一言、“ああ、脳梗塞ありますね” 。待合室の事をよく覚えていないが、やっぱり病院は面倒臭いな、病名なんかあるものか、もうどうでもいいか。入院も処方箋もなく、次回の予約も取らず帰宅した。

 自分は本当に浅はかだ、見栄っ張りだ。仕事を辞めてよかったのに。病院にこれ以上行くつもりもないくせに、辞めたら病院に行けないじゃないか、保健証はどうするんだ、近所からなんて思われるんだ。

 あぁ、体は正直だ。倒れて病院に運ばれた。

見栄を張らず、面倒臭がらず、素直に生きてこれたなら、ごめんな。」

~満天さんのつぶやき~

「その体、貸しているだけだからね。

いずれは、そこから出ていくの。

取扱説明書、この世に誕生する前に読んだよねぇ~。」


学校役員の掟

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

さて、さて、今夜のお客様は、、、。

~ 学校役員の掟 ~

「満天さん」

『やあ。』

「私ね、素敵なお友達が出来たのよ。」

『おぉ!』

「その素敵なお友達ってね、、、」

『ほう。』

「末娘はやっと6年生。悩んだけど、これからは方針を変えて支援学級に通うことにしたの、今年は小学生最後の年、私も気持ちを切り替えないとね。

これで最後、学校役員も引き受けて、パートも辞めたの。」

『へ~。』

「今は専業主婦ってとこ。仕事辞めて、“ちょっと楽?” な~んてね、思ったりして、それが、これって案外大変なのよ。今まではパートにかこつけ、言い訳が出来たでしょ、それがね~。

 いろいろな連絡が来るのよ、ラインに!それも急ぎでもないのに、直ぐ返事が欲しい人がいるのよね。役員の皆さんはお仕事していらしてね、日中に連絡が取れない方も多くて、仕事中は職場に携帯持ち込めないから、休み時間を利用してみたい、だからお昼は必ず私もラインチェ~ック!役員を仕切っている人がいて、そのボスママは一日中ラインしてくるのよ。 “あなた~!仕事していますか~?” って言いたい。私がすぐ返事しないと “仕事してないでしょ、ライン見てよ” って、私、専業主婦だけどそんなに暇じゃないのよね!

 うちは主人が自宅で仕事している日が多いの。だから子ども達がうるさいと近くに住む主人の実家に帰って仕事をするのよ。義父は定年退職で今は夫婦で静かに生活をしているのよ、地元の人だから、隣近所の事は何でも筒抜け、私達家族の事もね、、、まあまあ。

私が仕事を辞めて専業主婦をしていることを誰が言うともなく皆さん知っているのよ、当然、末の娘の事もね。

娘が不登校になった時も、近所中、もちろん主人の両親も心配して毎日のように家に来ては、あれこれと、、、そんな地域だから、ボスママやママ友達にも隠し事出来ないしね。私は、私の事をそっとしておいて欲しいの。静かに穏やかに子育てや主婦をしたい。娘が不登校でも、私はそれでも見守っていくことは出来ていたのよ。学校の先生とも、無理強いしないでゆっくりいきましょう、と方向性もしっかり持っていた。でも周囲がね、、、うるさいのよね、ったく!

 娘はね、控えめでおとなしい性格なの、静かな子なのよ。自分の世界にいる時がとても幸せなの。それだって学校の勉強もしてるわよ。不登校の時も家でお友達が届けてくれた宿題を真面目にやっていたわ。」

『ほお~、、、』

「今はね、教室も落ち着いていて、登校もして、一人に静かになりたい時は教室の隅の小部屋で本を読んだり、ゴロゴロして落ち着いている。

 やっとね、上の子ども達が手も掛からなくなったし、これから末の娘を中心に家庭でも落ち着いて静かに生活できると思っていた。これから1~2年は子育て中心に、今まで手抜きだった家事なんかもちゃんとして、主人にもちょっと見直してもらって、いい奥さん出来るかな~、なんてね。」

『ふん。』

「まさか、まさか、学校役員を侮っていたわ。こんなにも家族よりも束縛されるなんて、それも上下関係も強烈、ボスママって何?まあ、役員の長だけど、この時間の束縛、何?それも、食事の支度や、洗濯する時間まで聞いてくる? “買い物ぐらい早い時間にしたら、ライン見てよ。” “もう夕食、終わったでしょ。チェック出来るよね。” “ご主人、在宅なら家事手伝ってもらえないの。”

あぁぁぁ~、うるさいったら!

 役員の集まりに行くでしょ、噂話!あそこのお子さん、あそこの旦那さん、あの子のお母さん、あの子のお父さんって!

役員会議の実際の話なんてね、ほぼそれまでに出来上がっているんだから、ラインで!忘れたらダメ、掟なの。」

『おぉ~!』

「学校役員ってね、それなりにやりたい人もいれば、仕方なくやっている人もいるのよ。率先してやる人はね、周りをグイグイ巻き込んで引っ張ってくれる。ある意味、頼もしい、そういう人がいないとね、分かってるわよ!あぁ、でも、ある意味、面倒くさい。

みんな大人だから、それなりに周りと調和も取りつつ、まあまあ、みんな、頑張っているのよ、それなりに。

最近、私は私との会話ばかり。

 私って偉い!よくやっている!って私を褒めてあげる。そんな時、私を分かってくれている人って私しかいないの? と寂しくもなる。それでもこれを繰り返すしかないの。

 毎朝、毎晩、繰り返すの。

 私!偉いよ!その姿がキラキラしている!今日もたくさんよくやった!私のお陰!

私の言葉が!行動が!態度が!みんなを幸せにしてるんだ~!

ちょっと、傲慢?なんて私に問いかけたら、私の耳元で、私の声で、今がベスト!今のままが一番!って、もう一人の私が応えてくれるの。」

『うん、うん。』

「私の大親友!それは私自身!そんな大切な私に感謝!」

~満天さんのつぶやき~

今、目の前にいる人は誰? 

鏡をのぞいてごらん

ここから幸せがはじまるよ。


湯豆腐

満天さんの談話室

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

今日の来談者は誰かしら。

~湯豆腐~

「ごきげんよう。」

『やあ!ごきげんよう。』

「満天さんに幸せのお裾分け!娘もようやくこの春に社会人、同居の義母の介護も始まったばかり、とても新鮮さも感じる、不思議でしょ、介護なんて言うと周りはね~、でも幸せ!」

『おぉ。』

「ふ、ふ、ふ、

 結婚して、25年。私は専業主婦だから、家事や育児の毎日だったわ、まあまあね、いろいろな事もあったけど、私は夫に頼りきりの生き方しか出来なかった。まあ、そういう人生なんだと思っていたから、何とか受け入れて、、、受け入れざる得ないしね。

 娘はね、小さいころから大変で、人見知りが激しくてね、人一倍。精神年齢も未だに幼い!社会人にもなるのにゲームセンターで、ほらほら、あれよ、ぬいぐるみ!ゲットして喜んでいるのよ、ったくね!

 そんな子だから、学校では周囲と上手に付き合えなくてね、不登校になったりもしたのよ、地元の高校にギリギリで入れて、次は朝、起きられなくなってね、医師からは起立性調節障害って言われて、私の方が受け止めてられなくて、実際 “さぼりでしょ” ってね、思っちゃた。

 高校は毎朝、遅刻寸前、車で送って。休日の朝食は、テーブルで半分眠りながら、こっくり、こっくりと、寝てる?食べてる?かって。その子がね、社会人!この先どうなることやら。

 主人も忙しいからって、子育てに協力も何もなく、学校行事に参加したこともないのよ。

それでもね、娘には甘い!顔を合わす時間も少ないから、怒ることも叱ることもなく。家事も子育ても介護も、まるで関係ないって感じでね、要するにいいとこ取りよ。

 そんな中で、義母との同居も始まり、静かな人でね、当初、どう接していいのか分からなくて、“お義母様!遠慮しないで”って思ったぐらい、良くも悪くも何でもね。」

『ほう!』

「実は昨夜ね、こんな事があったの。主人は湯豆腐が好きでうちはよく湯豆腐をするの。」

『ほ~!』

「義母も湯豆腐は好んで食べてくれるのよ。昨日の夕飯も湯豆腐!主人は遅いと思っていたから、娘と義母と先に夕飯を済ませて、そしたら主人が帰宅して、てっきり外で夕飯を済ませると思っていたから、“食事!”って、湯豆腐を出したら、“またか、腹減ってるのに、おかずにならん!”って言うの。まあね、おかずにはならないのかも、でもね、私たちは、湯豆腐はおかずだけどね、まあまあ、そんな事で主人には、お魚焼いたり、前日の残り物なんかでおかずを出して。

 そうしたら、義母がね、急にまたテーブルに着いて、自分でご飯をよそって、主人の湯豆腐を取ってね、上手にご飯の上においてね、ポン酢をかけて食べ始めたの。 “美味しい、美味しい” って言いながら、、、

 主人はね、バツの悪そうな顔して、まあ最後まで何事もなく夕食済ませてくれたわ、義母もね、何事もなかったようにしていたけど。

 私は何も聞かないし、言わないって決めているの、どうして義母が夕飯をまた食べ始めたのか、主人に対して何か言いたかったのか、私に対してなのか、もしかしたら認知なのか、分からない。 ”見ざる聞かざる言わざる“ 私も何も考えないことにしたの。

 私は、今の生活をそのまま、ありのまま受け止めていこうと思っている。」

『うん。』

「私の知り合いの多くは働いている。私のように専業主婦は少数派。主人も娘もそれでいいと思っているのかな、家計も大変な時もあったけど何とか乗り越えてきたし。

 裕福な家庭とは言い切れないけど、まあまあ普通に、買い物だって、スーパーで食べたい物ぐらい買える、ローンも大変だったけど何とか払えた、主人が頑張ってくれた。

 そうね、共働きだったら、友達と食事や映画、旅行もして、高級化粧品やブランドの洋服やバッグも持っていたかも、ね。

 以前はね、働いているママ友がイキイキして見えて、子育ても仕事も全てが羨ましかった。私はね、主人頼りの人生だったけど、今は、それで幸せだなぁって感じる。娘や主人を送り出した後、ベランダで洗濯物を干したり、お布団を干してパンパンとはたきながら太陽の日を浴びる幸せ、、、娘を幼稚園に迎えに行き、夕飯のメニューを考える幸せ、娘を高校に送る時の私の存在感、義母の下着を洗ったり、家事をする私、それだけでいい、何もない、普段通りの生活、この先も主人と二人きりの生活になっても、歳を老いても、このまま生活を送るでしょう。

私にとっては、この生活が何もない生活が、かけがえのない幸福な生き方、でしょ!

私は満天さんに今日、これを伝えたくて来たのよ!

ありがとう、満天さん、あなたもお幸せに!」

~満天さんのつぶやき~

『幸せって、自分の心が決めること、

何も気にしない!

人に気を取られず、今の自分と向き合って、

“当たり前の幸せ“ に気づくとね、もっともっと幸せが増えていくよ。』


夜尿症 さっちゃん

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

さて、さて、今日の来談者は、、、

~夜尿症、さっちゃん~

「満天さん、、、」

『やぁ、さっちゃん。』

「施設の人にまた怒られちゃうよ、向こうに帰りたくない。」

『おや?』

「小っちゃい頃はね、こんなにおねしょはしなかったんだよ。でも最近はね、気をつけてるよ、寝る前にお水も飲まないよ、でもまたやっちゃった。

さっちゃんの施設ね、今は二人部屋なの。さっちゃんのように大きい子はあまりいなくて、同じ部屋のマリちゃんは年下、マリちゃんはもうおねしょなんてしないよ。今夜は、大丈夫と思っておむつはしなくて、おむつは気持ち悪い!失敗しちゃった。

高校生にもなって、おねしょはしないって施設の人は言うの。マリちゃんは、さっちゃんの事、分かってくれているけど、お布団やシーツを洗って片づけていると冬の間は寒いから、ドアの開け閉めがね、だからおむつして寝てって言うの。」

『おぉ。』

「小っちゃい頃はね、いつも失敗して、小学校になった時に、病院に行ってお薬もらって、だから大丈夫って、マリちゃんのように中学生になった時にはね、よくなったの。たまにお漏らししちゃう事もあったけど、病院の先生は大丈夫、そのうち治るよって、安心していいよって。」

『うん。』

「もうすぐ卒業。さっちゃんは大人になるんだ、働くの。だから、施設も出なくちゃいけないんだよ。グループホームって所に行くのよ。そこではね、自分の事は自分でするの。ご飯の支度やお掃除やいろいろとね、自分でやるの。そこにはお世話してくれる人もいるんだよ。今も学校がお休みの日に見学や体験に行ってるよ。

 お世話のおばさんも優しい人みたい。さっちゃんが一人で生活できるまでお世話してくれるって言ってたよ。

 今だって施設のお手伝い、たくさん出来てるけどね。小っちゃい子達の面倒もさっちゃんはよくやってる!と思うけど。お勉強も頑張ったよ。マリちゃんがお勉強みてくれるんだ。

 マリちゃんもさっちゃんも、とってもいい子なの、施設の人は分かってくれてるのかな、、、

 マリちゃんはすっごくお勉強ができるんだ、さっちゃんにも分かるようにお勉強教えてくれたよ。将来は先生になるんだよ。そしてね、いい子ども達をたくさん育てて、優しい親にするんだって、子どもを傷つけたり、捨てない親にするって言ってるよ。

 そしたらね、さっちゃんはもう捨てられないって言ってくれたよ。

 マリちゃんは年下だけど、お姉さんみたいなの。マリちゃんと離れるの、寂しいな、、、

さっちゃんね、パパもママもいないんだ、小っちゃい時はパパがいたけど、パパは男の人だからさっちゃんを育てられないんだって。パパはね、さっちゃんが大きくなったら一緒に住めるよって、はぁ~~

 さっちゃんみたいに、ずっと親と会えない子もいるって施設の人が話してくれた。でも、さっちゃんは、みんなより幸せな事もあるんだって、親がいてもマリちゃんのように辛い思いをする子がいるんだって、だから、だから、だから、、、

 でも、さっちゃんね、いつか会えると思っているよ。さっちゃんがいい子にしてるとね。小っちゃい時、施設の先生はパパが来てくれると“さっちゃん、いい子でした。”って、いつもパパに言ってくれたの、“パパはさっちゃんがいい子でいたら、また会いに来るよ”って言ってくれた、、、

 さっちゃんは、ここを卒業したら、どうなるかな。施設を出たらどうなるかな。」

『卒業!』

「そうだ!卒業!全部卒業する!

 さっちゃん、大人になるよ。

 満天さん、実はね、さっちゃんね、本当の事、、、知ってるんだ。」

『本当の事?』

「パパとママは、違う人と結婚して、子どもがいて、新しい家族と暮らしているの。さっちゃんには弟も妹もいるんだよ、パパにもママにもその子達にも、会うことはないけどね。

パパとママは一生、さっちゃんの事を忘れられないんだよ。この先、ずうっとね、さっちゃんにした事、さっちゃんを産んだ事や置き去りにした事を忘れたくても忘れられないんだ。おじいちゃんやおばあちゃんになればなるほどさっちゃんの事が心から離れられなくなるんだよ。だから、さっちゃんは、パパとママの心の中にずっといる事が出来るの。パパとママは、さっちゃんの事、忘れられないの。さっちゃんがママのおなかに入った日の事、産まれた日の事!

 パパとママのその気持ちはね、弟や妹も邪魔できない!さっちゃんだけに向けられる!特別なもの!」

『そう。』

「さっちゃんだけに向けられるパパとママの思い!さっちゃんだけのもの!」

『そう。』

「満天さん、私は大人、今から大人に生まれ変わるの!今日は満天さんに会えて、充分にお話し出来て、嬉しかった。さようなら、満天さん。」

~満天さんのつぶやき~

『さっちゃん、君の誕生が、君の存在そのものが、祝福されているんだよ。

 それを知るすべが、これからの人生に溢れているんだよ。


母 満の思い

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

今日も誰か、満天さんに会いに来ましたよ。

~母・満の思い~

「満天さん、いいかしら。」

『やあ、どうぞ。』

「明日はね、早起きして病院に行くのよ、息子と一緒に。息子はね、過敏性腸症候群って!私はね、もうどうでもいいの、病気もお好きに、どうぞって感じよ。はぁ~、ため息、、、

 後、何年、この生活が続くのかしら、中学生になったばかりなのに、学校も休みがち、24時間、毎日ゲーム、夜中もゲーム、最近は反発もひどい、暴力よ、物を壊したり、私に手を挙げるまねもしてくるのよ、恐ろしい、、、

 それなのに、そんな息子のために、一緒に病院に行くわけですよ、もう親やめたい。

 人に相談しても、結局、答えはない。私の話を聞くだけ、最初はね、話を聞いてもらうだけで良かったけど、最近はね、逆に疲れるの、、、

息子はね、発達障害でADHDって言われて、自閉もあるんですって、小さい頃は手もかかったけど、それなりに可愛かったのよ。公園ではね、広場をグ~ルグル走り回って、その笑顔が可愛くてね。お菓子のおまけのミニカーで満足そうにずーっと遊ぶ姿が愛おしくてね、、、

 うちはね、主人の暴力がひどいの、言葉も乱暴で、私を殴ったり、蹴ったり、暴力がね、物は破壊、結婚した頃は、力強くて頼もしいって、それも度を越せばDV夫。

 息子が産まれた時もね、何が気にいらないのか、病院に来たかと思えば、いきなりベッドを蹴飛ばしてね、先生やナースが来てくれて、、、今思えば、あの時に“助けて”って、、、あぁ、ずるずると、妹も生まれた。

 息子は似てくるのよ、主人に、」

『ふむ』

「娘はね、安心よ。でもね、考え始めるとこの生活で大丈夫なのかと不安、今は、元気に学校に行って、友達もいて、楽しそうに、何事もないかのように生活している、今の私の何よりの救い。」

『うん。』

「私が相談している人はね、“シェルターに入って”とか“早く離婚を”とか“仕事して”とかいろいろと言ってくる。

 最初はね、相談員のアドバイスもそれなりに私の耳に届いていた、親身になって話を聞いてくれていると感じていた。でも、今はそのアドバイスも入らないぐらい辛いのよ!むしろ指図されているようで、相談することが辛くなるし、もういいかな、、、しなくても。」

『ふむ。』

「だって、そうでしょ、そう出来るものなら、もうしてるわよ!逃げ出して、シェルターに入って、そんなこと分かっているわよ。出来ないから悩んでいるのよ、離婚だって、出来ていればしてるでしょ!簡単に言わないでよ、こっちの気持ちや状況がそう出来ない事をどうして分かってくれないのよ!って心の中で叫んでいるの。でも、それを口に出したら最後だから我慢して、もう、相談することも辛い、、、やめようかな、、、」

『ほお~、、、』

「今頃ね、夫はまだ夢の中、今日もずい分飲んで酔って大声で、、、暴れて、私や息子が病院にいる間もきっと布団の中でまだぬくぬくと寝てるのよね、気楽なものよ、どこかに消えて欲しい、あんな人、いなくなって、二度と私の前に現れないでほしい!」

『う~む。』

「後、何年続くのかしら、自分から終わりにするにはどうしたらいいのかしら、、、

 いつからかしら、この辛い生活にどっぷりとはまってしまったのは、、、」

『、、、』

「あぁぁ、子ども達、息子と娘、、、私は今日、目覚めたらいつも通りの生活が始まる。そして月日が、年月が流れていく。この先、夫と離婚しているのか、していないのか分からない。それでも時間は過ぎていく。子ども達は、いずれ大人になる。そうなった時、私は、、、どうなってるの!

 過去は取り戻せないし、このままいくしかない。でもこのままでは後悔する。変えなきゃ、この人生!私の人生を取り戻す!

 私は幸せになっていい人間なのよ!本当!今の生活って私の望んでいた生活ではないもの!私の人生を幸せの人生に変えていく、私はそうなっていいんだから!夫にも子ども達にも邪魔させない!

そう!だから今日から幸せだけに目を向けていくわ!」

『幸せ!』

「幸せ!満天さんに会えたこと!

 不思議ね、満天さんと話していると気持ちが落ち着く、楽になる、笑顔になれる!

 今日はお天気も良さそうだから、家に戻ったらお布団でも干そうかしら、シーツも洗って、、、あらっ?私ったら、何だか気持ちがワクワクしてきたわ!そうだ!家の花壇の手入れもしよう!あら、あら、忙しくなりそうね。

満天さん、ありがとう。何だか出来そうよ!この気持ちを忘れないように、現実社会で、やっていけそう!」

 

~満天さんのつぶやき~

『幸せも不幸も、自分の心がつくっているんだよ。

自分の心がそれを決めるってこと、気づいたようだね。

これから、この家族も笑顔が増えそうだ!」』


~旧友~

満天さんの談話室

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

~旧友~

「満天さん、聞いて欲しい事がある。」

『やあ、いらっしゃい。

 さあ、掛けて。

「ありがとう、今日、30年ぶりに友人と会う。」

『ほほう! 30年ね‼』

「あいつと俺は、不思議と同じ経験をしてきた。同じ時期に、タイミングを合わせたような経験をしてきたんだ。親や兄弟との決別、結婚、離婚、会社でのトラブルと。

あの当時は若かった若すぎた、何も分からず、ただただ互いに慰め、愚痴や悪口や不満などお互いに吐き出しながら過ごしてきた。お互いが必要としていたんだ。あいつも俺もお互いがいなければ乗り切れなかったかもしれない。」

『そうか。』

「金も無く、身内からは見離され、本当に辛かったな、人に言えない仕事もしたさ、あいつも俺も生きていく糧がそれしかなかった。それしか出来なかった。その選択が最善か最悪か、そんなことを考える余裕も知恵も何もなかった。それでも互いに支えあって生きてきた。

 そんな二人がそれぞれ家庭を持ったり、新しい仕事に就いたり、新しい人間関係が始まったり、段々と自然と、、、二人の間は離れていった。

 それでも二人はお互いを気にしていたさ、少なくともそう思っている。

ああ、あの数年、二人にとっては、、、

それが、今年、連絡がきたんだ。そこから一気に話が進み、会うことになった。」

『ふん、ふん。』

「家の留守電にあいつからのメッセージ、俺は十数年も無視してきた。そのうちメッセージも聞かなくなった。俺はあいつと違って惨めだった。俺は立ち直っていなかったんだ。

 あいつは再婚して、新しい家族との再出発を切った、あいつなりに家庭を築いた。あいつの親は、その再婚を機にあいつを認めた。祝福されたんだ。あいつは成功した。仕事もそれなりにやっている。

 俺も同じようにしたかった。新しい家庭を持ち、幸せになりたかった。でもあいつの幸せと俺の幸せは違っていたのさ。

 昔は同じように感じていたことが、それぞれの方向が違って、自分はみじめな気持ちになっていた、あいつのようになりたい、、、あいつのように生きたいと思っていた。

 記憶の中では、あいつの結婚式が最後に会った日だろう。

俺は、家族とも、兄弟とも疎遠になった。がむしゃらに勉強して、仕事して、それなりに出世して、職場では難なくやっている、、、

でも、俺には友達と呼べるやつもいない、信頼できる人間もいないし、いつでも孤独で、自分が頑張らなければと、自分なら出来ると、自分を奮い立たせて生きてきた。

 だから、あいつの事も無視して、、、何十年もな。

 あいつのように心を通いあえる人づきあいなんか俺にはない、出来なかった、そのすべも分からない。

だからさ、あいつが結婚して幸せそうな言葉を聞くと、年賀状の写真を見ると、どうして俺にはこんな幸せが来ないのかって惨めだった。それでもあいつには幸せでいてもらいたかった。あいつの幸せが俺の支えでもあった。」

『ふん、ふん。』

「満天さん、前にここに来た時に満天さんが俺に言ってくれた言葉、覚えているよ。人は、この地球に生まれ戻ることが決まった時、今世の新しい目的や宇宙との約束事や、たくさんの課題を持って、自分なりに自分が決めたストーリー、人生を決めて来ているんだよな。」

『ああ、そうさ。』

「俺は、この地球に生まれ戻る前の事を忘れてしまった、いや、覚えていたんだが、思い出せない。でも今、これだけは言える。俺は、この時代を選んで、あいつとの関係をやり直そうと、そしてこれからはきっと今まで以上にいい関係になることをストーリーに書いてきたんだ。

きっと、今夜、満天さに会った事も、向こうに帰ると忘れてしまう。忘れてしまう前に、今夜、この話を満天さんに伝えたくて来た。」

『ああ。』

「俺は、あいつに会う前に、あいつに似合う俺になっていたいと思う。あいつは、いつでも俺を忘れずに気にかけてくれていた。その気持ちに “ありがとう” と素直に言える俺になる。

 この途絶えた期間を埋め尽くし、溢れ出るほどにこの気持ちを伝えよう、俺が今まで頑張れたのはお前のお陰だと伝えよう。」

『ふん、ふん。』

「満天さん、また、な。この先のストーリーも聞きたいだろう、また来るよ、ありがとう。」

~満天さんのつぶやき~

『この先のストーリー、、、知ってるよ、、、

君の人生はこれからが本番、君が自分でこの先の生き方を決めて来てるのを、、、

そして、もうここに来なくても充分にやっていけるのも、、、、」


ジンくん

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

さて、さて、夜も深まってきましたよ。

静かに訪問者が扉を開きました。

~ジンくん~

「満天さん!!!」

『やあ!久しぶり!』

「最近さ、ヘルパーの仕事を始めたんだ、、、続きそうもなくて、、、僕はさ、近々、自己破産するんだよ。上手くいかないな。

 あっちの世界ではさ、僕にサポートの人が付いた訳さ、いろんな事が上手くいかなくて、乱れきってさ、一人で生きていくのが難しいって言われてさ、サポートの人が必要なんだって、こんな事あるのかな、僕は一人でも大丈夫なのに、親に知られたら、僕はさ、殺されちゃうよ、、、また、グチグチ始まるさ。」

『そう。』

「そっ、病院の紹介でさ。」

『ふん、ふん、』

「病院に行っている事だって親には知らせていないのに、僕の両親はさ、僕が小さい頃から、塾の経営をしていてさ、そりゃね、勉強、勉強、いい学校に行って、有名大学に行かせて、それはもう異常だったよ、成績が悪いと殴られたり、蹴られたり、それはひどくて、塾に通う子には、めちゃ、優しくしいくせに、自分たちの子どもにはとても厳しかったんだよ。

 今はさ、塾も大手に生徒持っていかれて、経営難さ、父親はさっぱり仕事もしなくてさ、教員の母の収入が家計の支え、、、さ。

 僕には兄がいるんだけど、兄は優秀で、今は地方の公務員、お偉いさんさ。父にも母にも逆らわず、ずっといい子でさ、兄が家にいるし、僕は思い切って家を出た。」

『そうか。』

「ああ、結局、高校も中退さ、自分ではどうすることも出来なかったんだ。僕には居る場所はなかった、親と僕とは何か違う生き物のような気がしてた。

 バイト先で知り合った子と同棲して、そこで家を出た訳さ、それも上手くいかなくて、その子もさあ、、、親と一緒さ、帰りの時間やら、お金の使い方やら、理屈っぽいし、何でも干渉して、僕を支配しようとする。耳元で嫌味を聞かされ、思う通りにならないと、、、それは、もう、、、だからさ、逃げ出したわけさ。」

『はぁ~。』

「それでも、親はさ、僕にあれこれ言ってくるわけさ、これからどうするだとか、父親なんて、クズなくせしてさ、仕事もまともにしないくせに偉そうに言ってくるわけよ。母も生きていくために何かしろとか、勉強しろ、資格でも取れとかさ、僕は僕なりにやってきているのに、まるで僕はゴミか!って感じさ、

 頑張ったてどうすることも出来ない事ってあるだろう、頭と心がバラバラな訳さ、でもさ、親から離れて、僕なりに高校も通信だけど卒業したし、資格も幾つか取ったし、講師の仕事にも就いたけど、続かなかった。親にはまだ話していない。言えないよな、、、言えば、またクズ扱い、僕はゴミさ。」

『君は立派だと思うけどな。』

「ここの世界は幸せだぁ~。いつも僕を満たしてくれる。安心させてくれる。満天さんはさ、いつでも僕を受け入れてくれるよね。僕はそれを望んでいるだけなんだ。」

『君は君さ。』

「親にもたまに会うけど、辛い。いつまで偽りの自分を演じられるのか、他人ならさ、偽りの自分でも付き合っている時間だけ演じていればいいんだよ。辛くなったり、もうだめだと思えば逃げることも出来る。時にはさ、付き合いについても考えた事もあった、でも関係が深くなれば、自分を出す事も、干渉しあう事もあるだろ、僕はまだそれが出来る準備が整ってないわけさ、だからさ、自分から身を引いてしまう、な、、、

 親はさ、どうしてか、なかなか踏ん切りがつかない。

あっちの世界で僕についたサポートの人がどんな人かって、それはさ、話も聞いてくれるし、まあ、いい人さ、、、でも、これから、、、だろう。」

『これから、ね。』

「満天さん、また来てもいいかな、ここの世界に来ると気持ちがいい。」

『いつでも来ていいさ、ここは君の故郷だろ。』

「ああ、僕はね、もう少し出来るような気がするんだ。満天さんは上の世界から僕をいつも見てくれているよね。僕のいいところもダメなところも、黙って見ていてくれるだろ。満天さんの世界で満たされる事で僕は向こうで生きていける。

 僕の耳のピアスの穴、大きくて向こうが丸見えだろ、僕は鏡を見るたび、いつも感じている。この穴を通して。鏡に映る耳の穴の向こうにいつも満天さんが勇気や愛をくれているって。

 満天さんに会いに来ることが出来るようになって良かったな。これからはね、あっちの世界の人達の言葉も、、、、このピアスの穴を通して、満天さんに届くように聞こえるように、もっとよく聞くようにするよ。

 だからさ、僕を見ていて、僕の話を聞いていて、僕にはそれが必要で、それが生きていく力になるから。」

『君はもう大丈夫だ。』

「ああ、分かってる。じゃあ、行ってきます。さようなら。」

~満天さんのつぶやき~

『耳のピアスの穴、なくてもね、聞いているし、見てるけどね、、、

 そろそろ、それに気づきそうだな、、、』


~職場のお隣さん~

満天さんの談話室

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん。

今夜も誰か、満天さんに会いに来ましたよ。

~職場のお隣さん~

「満天さん、こんにちは」

『やあ、やあ。』

「私の部所は二人しか人を配属してもらえない事、知っているかしら。それも二人とも社員じゃないのよね。二人とも非常勤、パートよ。力関係のバランスもなくて、私の方が会社では後輩だけど、この部所の配属年数は私の方が長いのよ。

 この部所に配属になって、もう何年たつかしら、今回で何人目かしら、私と組む人、、、それもね、もう定年近い方ばかり来るんだけど、、、

 その方達は、確かに今まではキャリアもあってそれは頑張ってきたと思うけど、それも認めているけど、ここではどちらかといえば私たちのキャリアは関係ないのよね。

 いつも自慢話や過去の栄光の話や、人の批判も多くて、段々と聞いているのも嫌になるし、相手をするのも嫌気がさしてくるのよね。

 二人だけだから、何を言っても、、、聞いているのは私だけだからね。」

『ふん、ふん、』

「仕事もしているようで、内容を見ているとあまりしていなかったり、結局、私が報告書を作成したり、集計取ったり、、、」

『ふん、ふん、』

「仕事だからやりますよ。それにやらないと他の部所にも先々迷惑をかける事分かっているから。負担が多すぎて、、、その人の分までやる羽目になるから、説明して、してもらった事もあったんだけど、、、結局、間違いだらけで私の仕事が増えてしまって、、、

私の気持ち、分かってくれるかな。愚痴りたくもなるし、嫌味の一つも言いたくなる。」

『ふん、ふん、』

「つい言ってしまうの、毎回、そんな人しか来ない。だからついつい言ってしまう。その人の事を愚痴ってしまう。私の愚痴を聞いた人はね、やっぱりそれを誰かに言うでしょ。結局、それで自分が後悔して辛くなる。反撃は食らうし、上からは、“君の対応がキツいと苦情が出ているよ、幹部会でも君の対応が問題になっているよ”と言われたの。

 職場は二人だけだから、歳下の私から間違いを言われてしまうとプライドが許さないのよね、分かるけど、あることない事まで言われて、、、だったら仕事してよって言いたい。もう辛くて、、、悲しくて、、、悔し~い、、、

 今まで机を並べてきた人と二度と話もしたくないし、会いたくないし、会社も辞めたい。

 愚痴ってしまった事、後悔しているの、その人たち好きじゃない、そんな人の為に愚痴を吐いた私の心が悲しいの。」

『う~む。』

「満天さん、こんな話、たくさんあるよね。きっと地上ではこんな事ばかりで、ここに戻ってくる人はもっと辛い人ばかりかな、」

『そうとも限らん、、、』

「満天さんに会うと何だか心が落ち着く。私はね、こんな感じに考えようかなって思うんだけど、聞いてくれる?」

『何だい?』

「私と今まで机を並べて仕事してきた人はね、私の部所に来て辛いんじゃないかなって、上から見離されたと思ってないかなって、今までのキャリアを一気に無くした気持ちなんじゃなかな、って、だから、この部所でもう一度、認めさせようとか、やるせない気持ちをどうゆう風に吐き出していいのか分からないんだよね。そう思うと悲しい人達だよね、、、

でもさ、その事って私が原因ではないよね。だって、私が配属を決めた訳ではないし、その人達の思いと私とは関係ないもの。だから、その人達の事を気にしなくてもいいんだって思おうと考えたの。何なら気にもならないぐらいの気持ちでいてもいいかなって、、、

それにね、私だけど、その人達の言葉や態度で自分の心が乱れていたなんて、なんだか、恥ずかしくなって、私は私の仕事をして、私の生き方と向き合っていく方が私は充実して仕事も人生も送れるんじゃないかしら。

私はいつも自分に素直で今の幸せを感じながら生活したいな。仕事があるから、お給料ももらえるし、友達と食事して、家族と旅行にも行ける!

それに一番喜んでもらいたいのは、満天さんに笑顔であって幸せな私を見てもらいたい、それが本当の私の姿!!!」

『そろそろ向こうは一日が始まるよ』

「さようなら、満天さん」

~満天さんのつぶやき~

『人生の充実、幸せ、もっとたくさんやって来るのよね。今の幸せに気付くとね。』


満天さんの談話室

空を見上げてごらん、そこにいるのは満天さん

満天さんは天上の方、いつもそこにいる。

いつもその宇宙からたくさんの星たちを見守っている。

星たちは満天さんに見てもらいたくてそれぞれの魅力を輝かせ目いっぱいのアピールをしている。

満天さんってどんな方? それは誰も分からない。

知っているのは貴方だけ。

満天さんの性別? それは誰も分からない。

知っているのは貴方だけ。

満天さんの年齢? それも誰も分からない。

知っているのは貴方だけ。

満天さんの憩いの場、そこは誰でも訪れることができる場所。

ここでは談話室とでも呼びましょうか。

満天さんの談話室、そこは本当の貴方だけが訪れることが

できる夢の中。

満天さんの談話室、ちょっと覗いてみませんか。

こっそり覗いてみてみましょう。

~内緒のお話~

満天さんの世界は宇宙の星たちと時間が逆さま。

満天さんが朝を迎えると星の人々は眠りにつく。

眠りについた星の人々は夢の中で満天さんに会いに行く。

満天さんに辿り着いた星の人たちは幸せな人。

さてさて、今日はどんな訪問者?